朝活読書サロンCollective Intelligence

月二回渋谷で開催している朝活読書サロンCollective Intelligenceに集う本をこよなく愛するメンバーのブログ

【お前もだよ!】『百禁書 聖書からロリータ、ライ麦畑でつかまえてまで』

こんにちは。readingsalonのブログ、共同執筆者の北澤です。毎月第一土曜日に、その月に読んだものの中から印象に残った本を紹介しています。今回も引き続き遅れての投稿になりました。ごめんなさい。


本日紹介するのは、禁書を取り上げた『ファクツ・オン・ファイル』全四巻シリーズから、禁書百冊を抜粋した一冊。それにしても、表紙がエロい。この本自体が発禁処分を受けるのではないかと心配になります(笑)


『百禁書 聖書からロリータ、ライ麦畑でつかまえてまで』



本というものは様々な理由で検閲という名の弾圧を受けます。政治的な、宗教的な、性的な、社会的な理由などで。しかしながら、禁じるという行為にどれほどの意味があるのでしょうか。禁じられれば禁じられるほど、それを覗き見したくなるのが人間の性。好奇心の強さを甘く見てはいけません。


本書では、政治的、宗教的、性的、社会的理由の四つに大別して、発禁とされた書物たちが紹介されています。タイトル、著者、初版年および発行地、出版社、そして形式(ノンフィクション、小説、自伝など)が上げられて、概要が述べられた後に検閲の経緯が説明されている構成になっています。


国がその本を禁じるのは、そこにその国の真実が露見しているから。アメリカにしても、ロシアにしても、イギリスにしても、隠したくなる真実があるものです。


『CIAの戦争』
『収容所群島 一九一八年~一九五六年』
『スパイキャッチャー』


ベトナム戦争を最前線で観察した著者が語る大本営の内幕。ソビエト市民が自国政府によって被った大虐殺の詳細と実態。イギリスの元情報保安部調査科学官が感じた諜報および政府への幻滅と困惑。アメリカ、ロシア、イギリスの表には出ない真実が描かれた書籍たち。どれも興味深いです。


表紙のようなエロい方面はどうでしょうか。表現があまりにも露骨で直接的に過ぎるという理由から弾圧された書物が圧倒的に多いようです。それゆえにやや単調で面白みに欠けるのが難点。次の一冊を除いては。


アラビアン・ナイトまたは千夜一夜物語英語版)』


英語版であることが残念(勉強しろよ!)。サー・リチャード・バートン訳です。これが最も完全でオリジナルに忠実な訳書。シンドバッド、アラジン、アリババ、長らく子供向けとされてきた物語なので、性的な表現は省略もしくは遠回しな言いかたにされることが多かったようです。


しかしながら、バートンは臆することなく(笑)性的な場面をかつての訳者に比べて遥かに露骨に翻訳しました。前書きでは「まるでアラビア人が英語を書くように」訳したと述べています。その意気込みがいかほどのものか、以下の引用をご参照あれ。

バートン訳では肉欲、レズビアン、男色、獣姦、女装、肛門性交、近親相姦、それに性行為としての割礼といった題材がいささかも臆することなく、華麗な文体で展開している。バートンの筆にかかると、性に貪欲な奴隷の少女、魅力的な処女、いたるところに登場する宦官、そして好色な老女たちが妖美な世界を繰りひろげ、ぶどう酒がいざなう肉欲の世界に読者は陶然とするのだ。


なお、バートン訳には最終評論が付いていて、世界各地を旅した実体験を基に男色や異常性行為のあれこれを国ごとに紹介しています。これがなんと全体の四分の一を占めていてるのだとか(笑)もう、これを読むためだけに英語を勉強したいくらいです。


とまぁ、知識欲ばかりではなく学習意欲も刺激してくれる一冊でした。それにしても、百冊の禁書を集めた本書は「お前も(禁書)だよ!」と叫びたくなる代物です。本書が禁書となってしまう前にお早めにお召し上がり下さい(笑)