朝活読書サロンCollective Intelligence

月二回渋谷で開催している朝活読書サロンCollective Intelligenceに集う本をこよなく愛するメンバーのブログ

【このような日本人がいたことを誇りに思いたい】『昭和天皇独白録』

こんにちは。readingsalonのブログ、共同執筆者の北澤です。毎月第一日曜日に、一ヶ月で読んだ本の中から選りすぐりの一冊を紹介していきます。


本日は、寺崎英成とマリコ・テラサキ・ミラーによる『昭和天皇独白録』を紹介します。昭和天皇から直々に聞いた、開戦から終戦までの経緯をまとめたものだと思っていましたが、とんでもない勘違いでした。これはマリコの架け橋の物語だったのですね。


昭和天皇独白録』



本書は、張作霖爆死事件から終戦に至るまでの経緯を計五回、四日間にわたり昭和天皇から直々に聞いたものを寺崎英成が記した「昭和天皇独白録」と、寺崎英成のひとり娘マリコ・テラサキ・ミラーによる「"遺産"の重み」の二部で構成されています。


五十年の生涯の五年間で、救い難いほどの挫折感と官吏として最高の栄誉を味わった明治生まれの外交官、マリコの父親である寺崎英成が残した「昭和天皇独白録」の価値は計り知れません。しかしながら、寺崎英成という人物、その妻グエンとひとり娘のマリコ、この素晴らしい家族を知ることができたことこそが、この『昭和天皇独白録』を読んだ収穫でした。


マリコは序文で「この記録の随所に現れる陛下の人間性と人間的苦悩は、父英成がなんとしても万人に伝えたいと願ったことにちがいないと信ずる次第である」と綴っていますが、それに負けない魅力がマリコの物語にはあります。マリコが綴る「宿命的な母グエンの死」「ある外交官の挫折と栄光」「"かけ橋"こそ父母の遺産」には本当に感動させられました。


このような日本人がいたことを誇りに思いたい。マリコの母グエンが書いた『太陽にかける橋』は読んでみなければなりません。また、マリコはいずれ自伝を手掛けようと思っていると書いています。これもまた待ち遠しい。最後に父から娘への言葉を引用します。

マリコ、お前はとてもラッキーな子供であることを、決して忘れてはいけないよ。普通の人は、たったひとつのヘリテージ(伝統)しか持っていないのに、お前には二つのヘリテージがあるではないか


素晴らしい日本人、素晴らしい家族に出逢える一冊です。タイトルからは想像もしていませんでした。これだから読書は止められません。