朝活読書サロンCollective Intelligence

月二回渋谷で開催している朝活読書サロンCollective Intelligenceに集う本をこよなく愛するメンバーのブログ

【中国の覇権的国家戦略「100年マラソン」とは!?】『China 2049』

あけましておめでとうございます。readingsalonのブログ、共同執筆者の北澤です。毎月第一土曜日、その月に読んだものの中から印象に残った本を紹介します。そういい続けて毎回遅刻でごめんなさい。今年から毎月第一日曜日の更新に改めます! これで今年は遅刻はなし?(笑)今年もよろしくお願いいたします。


本日は、中国の覇権的国家戦略を暴く一冊を紹介します。ニクソン政権以来30年に渡り米政府機関で対中国の防衛政策を担当してきたマイケル・ピルズベリーの『China 2049』です。これは刺激的な一冊でした。


『China 2049』



原書のタイトルは「The Hundred Year Marathon」です。この「100年マラソン」とはいったい何か? 中国共産党共産党革命100周年を迎える2049年までに、世界の経済・軍事・政治のリーダーとしての地位をアメリカから奪取することを狙っているという、中国の覇権的国家戦略が「100年マラソン」なのです。


この強みは秘密裏に遂行されるところにありました。ところが、いまや中国はその考えを公に語り始めたといいます。何故なのか? それはもう手遅れであり、アメリカは太刀打ちできないことが分かっているからです。中国はアメリカが犯した重大で危険な情報収集の「失敗」を暴き始めたというのです。


中国がマラソンの勝者になれば、中国中心の世界は独裁政治を助長させ、多くのウェブサイトが欧米を中傷して中国を称賛する偽りの歴史で埋まり、中国が支配する経済同盟が世界市場をコントロールして、世界最強の軍事同盟を北京が統括するようになる。既視感があるのは気のせいではないでしょう。


一方で、上記の中国を「アメリカ」と置き換えると、いまの世と何が違うのでしょうか。もちろん、中国とアメリカとでは大きく異なります。しかしながら、一つの大国が覇権を握ることに変わりはありません。本書はアメリカだから語れるものですが、だからこそ素直に受け止められないと感じさせました。


現在も続いている中国のマラソン戦略。100年マラソンの土台となる中国の戦略を構成する九つの要素が以下の通りです。


1. 敵の自己満足を引き出して、警戒態勢をとらせない
2. 敵の助言者をうまく利用する
3. 勝利を手にするまで、数十年、あるいはそれ以上、忍耐する
4. 戦略的目的のためな敵の考えや技術を盗む
5. 長期的な競争に勝つうえで、軍事力は決定的要因ではない
6. 覇権国はその支配的な地位を維持するためなら、極端で無謀な行動さえとりかねない
7. 勢を見失わない
8. 自国とライバルの相対的な力を測る尺度を確立し、利用する
9. 常に警戒し、他国に包囲されたり、騙されたりしないようにする


特に、7.の「勢」は100年マラソン戦略の決定的要素だといいます。敵を騙して思い通りに動かし最大の好機を待つ。戦国時代の教えを受け継ぎ、古代皇帝の盛衰を学ぶことに基づいた中国の思考法。彼を知り己を知れば百戦殆うからずといいます。今更ながらですが、中国の古典に学ばなければなりません。


中国を知る、そしてアメリカを知る絶好の機会となる刺激的な一冊でした。