朝活読書サロンCollective Intelligence

月二回渋谷で開催している朝活読書サロンCollective Intelligenceに集う本をこよなく愛するメンバーのブログ

【報道では得られない情報がある】『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』

こんにちは。readingsalonのブログ、共同執筆者の北澤です。毎月第一土曜日に、その月に読んだものの中から印象に残った本を紹介しています。今回は一週間以上遅れての投稿になりました。ごめんなさい(汗)


本日は、イスラム国の実態を取り上げた『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』を紹介します。イスラム国に関する書籍を読む際は何らかのフィルターを通すことにしています。とんでも本に当たることを避けるために。今回は池上彰さんをフィルターに使わせもらいました。解説を寄稿しています。


イスラム国 テロリストが国家をつくる時』



メディアを通して見ることができないイスラム国の一面を教えてくれる一冊です。池上彰さんが解説で「「過激テロ国家」という認識の思い込みの修正を迫る本」として本書を紹介しています。


社会主義が無残な失敗に終わり、ロシアや中国は古典的な帝国主義丸出しの戦略を打ち出している。一方、社会主義に勝ったはずの資本主義国では格差が拡大して人々の不満が徐々に高まっている。社会主義も駄目、資本主義も駄目、既存のパレスチナ人組織も信用できない。そのような状況下で人々が期待を寄せたのがアラブの春でした。しかしながら、軍事政権が容易に倒れることはなく人々は再度の絶望を味わうことになります。


そこに現れたのがイスラム国。時代錯誤の封建国家ではなく、近代化された洗練された組織である国家こそがイスラム国なのだと本書は分析しています。イスラム国の主張を一つ引用します。

アルカイダは一つの組織にすぎないが、われわれは国家だ


我々がまず思い浮かべるイスラム国は、残虐な公開処刑を行う姿でしょう。イスラム国は「一部の行為」が目立ち過ぎているのであり、あなた方(我々)は処刑だけを見ていると主張します。これはあながち間違いではないでしょう。報道されるのは、西側諸国などが意図的に見せようとする彼らの姿だからです。


メディアにさらされるのは、報道を通してアメリカなどが我々に見せたい彼らの姿なのです。そこには食糧配給所を作り、学校や病院を建て直し、水や電気といったインフラを整え、子供たちにポリオワクチンを接種させるといったような彼らの一面は、いっさい反映されていません。


イスラム国を肯定するつもりはありません。しかしながら、過激テロ組織といった型通りの見方に終始していると彼らへの対応を誤ることになり、世界秩序に悲惨な結果をもたらすことになりかねません。メディアを通して見ることができないイスラム国の姿も見ておく必要があります。


報道では得られない情報がある。型通りのものではない、メディアを通して知ることができないイスラム国の一面を教えてくれる一冊です。