朝活読書サロンCollective Intelligence

月二回渋谷で開催している朝活読書サロンCollective Intelligenceに集う本をこよなく愛するメンバーのブログ

【古典への扉を開けてくれる古典】『光源氏の一生』

こんにちは。readingsalonのブログ、共同執筆者の北澤です。毎月第一土曜日に、その月に読んだものの中から印象に残った本を紹介しています。今回もまた遅れての投稿になってしまいました...


皆さん、紫式部源氏物語』は読んだことありますか? 私はありません... 大和和紀の漫画『あさきゆめみし』も恥ずかしながら第一巻で音を上げました。登場人物が多過ぎてギブアップ(泣)


そこで、本日紹介する一冊の登場です。もう、素晴らしい圧縮ぶり。看板に偽りなしの名著です。


池田弥三郎著『光源氏の一生』



初版は1964年4月1日、手元にあるのはなんと第70刷! もはや古典といっても差し支えないでしょう。そう、本書は古典を語る古典なのです。看板は「源氏物語の世界へいざなう不朽の名著」です。


源氏物語』を文学的な感動を与えてくれる数少ない日本文学と持ち上げる一方で、長過ぎるためにかなり無駄な部分があるとしています。その長さゆえ全てを丁寧に読み通す人は多くはないと。

そこでわたしは、長くて複雑な源氏物語の内容を、大胆にカットしてみました。そして「光源氏の一生」という筋道に、源氏物語の内容を再編成してみました。


読みやすい全訳があるとはいっても、難解な原文によらなくてもかなりの満足が得られるといっても、その長さに変わりはありません。そう、この新書はたいへんありがたい一冊なのです。

これほどの、しぶとい、心長い、陰影に富んだ男は、日本の文学の上には、まだ現れていないのです。


プレイボーイの代名詞として扱われる光源氏。間違えてはいないと思いますが、それで終わるようなら古典中の古典として読み継がれることはないはず。本書はその読みどころを教えてくれます。


光源氏も生まれながらにして完璧だったわけではありません。長い一生の間に失敗を繰り返しながら完成されていくのです。面白い(?)のは、その失敗が女性との過ちに特化していたこと。


池田弥三郎先生の「いろごのみ」に関する解説が参考になります。後世で「好色」と翻訳されたこの言葉、その本来の意味は「もっとも適切なる相手の女性を選択する」ことだったといいます。


光源氏の一生も然り。その女性遍歴の中に好色ではない方の「いろごのみ」を見る。そういったところを「も」読み取らなければならないのです。単なるプレイボーイではなかったのですね。


古典への扉を開けてくれる古典。とても素晴らしい一冊です。是非お試しあれ。