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朝活読書サロンCollective Intelligence

月二回渋谷で開催している朝活読書サロンCollective Intelligenceに集う本をこよなく愛するメンバーのブログ

【絵画と言葉の両方が堪能できる秀逸な一冊】『洲之内徹が盗んでも自分のものにしたかった絵』

こんにちは。readingsalonのブログ、共同執筆者の北澤です。今年から毎月第一土曜日に読んで印象に残った本を紹介しています。今日は7月5日、7月の第一日曜日。三ヶ月連続で一日遅れの投稿になってしまいました。日曜日更新と勘違いしているようです...


さて、本日紹介する一冊は先月紹介した『白洲次郎に学ぶビジネスの教科書』から繋がった本です。このような流れで。青木高夫『白洲次郎に学ぶビジネスの教科書』⇒ 白洲正子『遊鬼 わが師わが友』⇒ 洲之内徹洲之内徹が盗んでも自分のものにしたかった絵』


洲之内徹/洲之内コレクション「気まぐれ美術館」『洲之内徹が盗んでも自分のものにしたかった絵』



白洲次郎に学ぶビジネスの教科書』で白洲次郎熱が再燃したので白洲次郎関連の本を物色。白洲正子『遊鬼 わが師わが友』もその中の一冊です。この中で興味をひかれた人物が洲之内徹でした。美術エッセイスト、小説家、画廊主、画商などと紹介されています。


気になる人物を追うには本を読んでみるのが一番。関連する書籍を物色してみたところ本書が目に付きました。これはタイトルにやられました。実際に洲之内徹が鳥海青児の「うずら」を前にした際に感じたことのようです。盗んでも自分のものにしたいとは(笑)

「どんな絵がいい絵かと訊かれて、ひと言で答えなければならないとしたら、私はこう答える。ー 買えなければ盗んでも自分のものにしたくなるような絵なら、まちがいなくいい絵である、と。」


まさに! と膝を打つような言葉だと思いませんか? これに限らず、洲之内徹はとても魅力的な文章を書く人物です。本書は洲之内コレクション(絵画)を楽しむこともそうですが、絵を通して紡ぎ出された洲之内徹の言葉を楽しむ、そのような本だと思います。


目的は洲之内徹の文章でしたが、目に留まった絵もいくつかありました。例えば小泉清の「猫」という絵です。ダイナミックな筆致で描かれた横たわる猫。その目が佐野洋子の『100万回生きたねこ』によく似たつり目だったので目を引いたのかもしれません。


小泉清の「猫」と対照的なのが、本書の表紙を飾るっている長谷川潾次郎の「猫」です。長谷川潾次郎は仕事が遅くて泣かされたのだとか。この絵も六年前に完成していたはずなのに髭を描いてないからまだ渡せないと言われて困ってしまったのだそうです。


私は本読みですが、本の範疇に絵本や漫画も入ります。文字だけでは伝えられないことを絵は伝えてくれるからです。私にとって絵本を読むことも漫画を読むことも立派な読書です。洲之内徹は言葉には表せない絵の素晴らしさをこのように伝えています。

「こういう少女の少女らしさを言葉や文字で現わすとしたらどうすればよいか。絵の見事な描写を見ると、私はいつもそんなことを考える。これは文字にはならない世界、絵や彫刻だけの世界である。絵の有難さである。」


まったくその通りだと感心してしまいました。洲之内徹、とにかく魅力的な文章を書く人です。本書にはその魅力がたっぷりと詰め込まれています。絵画と言葉の両方が堪能できる秀逸な一冊。手元に置いておきたいと思わせる本に久し振りに出逢えました。