朝活読書サロンCollective Intelligence

月二回渋谷で開催している朝活読書サロンCollective Intelligenceに集う本をこよなく愛するメンバーのブログ

【ストーリーとしてのジレンマ】『「バカな」と「なるほど」』

こんにちは。readingsalonのブログ、共同執筆者の北澤です。今年から毎月第一土曜日に、読んで印象に残った本を紹介しています。今日は4月4日、4月の第一土曜日です。先日開催した第33回朝活読書サロンCollective Intelligenceで紹介した一冊です。


吉原英樹著『「バカな」と「なるほど」』



『ストーリーとしての競争戦略』の楠木建が推奨していて以前から気になっていた本です。楠木建が著書で紹介したことがきっかけとなって復刊したそうです。復刊によせた寄稿で、僕の目を開かせてくれた「バカなる」の復刊を心から嬉しく思うと述べています。何たる素晴らしい恩返しでしょう。


本書、発行は1988年、絶版は1991年、何と3年の命。本の命は儚いものですね。人知れず絶版になっていく本は数知れずなのでしょう。なんと23年振りの復刊です。この本、ユニークな見方や表現に溢れています。著者オリジナルのものばかりではありません。しっかりとパクっていますよ(笑)


朝活読書サロンでも紹介した「ダブダブの洋服の戦略メッセージ」が面白かったです。まずこのユニークな表現。読めばなるほどと唸らされます。住友銀行の組織改革が例として挙げられています。その時の業務量からすると明らかに大き過ぎる組織を「ダブダブの洋服」と表現しているのです。


タイトルにある「バカな」と「なるほど」とはどういう意味なのでしょうか? 差別性、それも周囲から軽蔑されるような差別性を表現したの言葉が「バカな」であり、合理性ないしは論理性を表しているのが「なるほど」なのです。これを楠木建流に表現すると次のような言い方になります。

成功している企業の多くが、一見して非常識(=バカな)だが、よくよく見ると合理的(=なるほど)な戦略を実行しているという意味合いである。


いかに楠木建に影響を及ぼした本であるか、著書『ストーリーとしての競争戦略』を読んだことがある人ならわかってもらえるでしょう。これ、クレイトン・クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』にも通じるものがあります。まさに「バカなる」は「ストーリーとしてのジレンマ」です。


最後に、この「バカなる」を象徴するくだりを引用して締め括りたいと思います。

新しい戦略を打ち出したとき、他社からバカよばわりされたり、軽蔑されたら、そのときは内心「しめた」と思っていただきたい。


興味がある人はぜひ読んでみて下さい。これだけ楽しめて税別1,300円は安い。シンプルな装丁も好きです。楠木建『ストーリーとしての競争戦略』とクレイトン・クリステンセン『イノベーションのジレンマ』の間に鎮座させよう。何と言っても「ストーリーとしてのジレンマ」な本ですから。