朝活読書サロンCollective Intelligence

月二回渋谷で開催している朝活読書サロンCollective Intelligenceに集う本をこよなく愛するメンバーのブログ

【縁の下の力持ちを教えてくれる】『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』

こんにちは。readingsalonのブログ、共同執筆者の北澤です。毎週土曜日に、一週間で読んだ本の中から一冊を紹介しています。ブクレコで一日一冊、読んだ本の感想を書いていますので、良かったら覗いてみて下さい。


さて、今週の一冊はこちらです!



佐々涼子著『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』です。佐々涼子さんの本は二冊目。前作『エンジェルフライト』も素晴らしい作品でした。



両方とも、普段は意識することはありませんが、日本社会を支えてくれている「縁の下の力持ち」に目を向けさせてくれるノンフィクションです。本書は、日本製紙の基幹工場である石巻工場が、東日本大震災の災禍から立ち直るまでの物語。


まず、著者と編集者との会話に出てくる「不足してみないと、何も知らないことにすら気づけないなんてね。」という言葉に自省させられました。


日本の出版用紙の約四割が日本製紙で生産されている事実をご存知ですか? 著者と編集者は、出版用紙がどこで作られているのかを知らなかった迂闊さに呆れたそうです。これは、普段から「紙の本」を愛好する者としてまったく同感でした。


著者がいて、出版社、そして書店があって、本は書かれ、作られ、そして売られています。しかし、著者や編集者の想いを込めた文字を乗せる紙がなければ本になりません。日本製紙がまず考えたのは、出版物を途切れさせないことだったのです。


なぜ、彼らは懸命に紙をつなげようとしたのか? それは、彼らが本というたすきでつなぐ長いリレーの一走者だからです。そして、この長いリレーは途絶えさせず延々とつないでいかなければならない。そう、われわれ読者も一走者なのです。


紙の本を愛好する者として、自身の読書を支えてくれている縁の下の力持ちの存在を教えてくれた、気付きの一冊でした。そして、東日本大震災の記録としても価値のある一冊です。紙の本を愛する人は是非ご堪能いただればと思います。